John

ジョン

ある男が商用のためにベルリンまたはほかの大都市を馬車で訪ねました。彼は市場の真ん中で馬車を下りて仕事に行きました。馬車にはジョンというの名の御者が乗っていました。一人の警官が御者に近づいてきて、なぜ市場の真ん中に止まっているのかを尋ねました。「おまえは自分が誰だと思っているんだ」と警官は叫びました。

警官が自分の名前を尋ねていていると思い、御者は「ジョンです」と答えました。

警官は彼を殴り、再び叫びました。「おまえは自分が誰だと思っているんだ」

「ジョンです」と御者は叫びました。

警官は彼を激しく殴り、「おまえは自分が誰だと思っているんだ」と叫び続けました。そしてとうとう彼を馬車とともに脇道まで引きずっていきました。

男が戻って来たとき、彼は御者を探し回りました。そしてようやく御者を見つけて尋ねました。「ジョン！何が起こったんだ」

御者はおびえてささやき声で答えました。「私をジョンと呼ばないでください。私は自分が誰だか考えているんです」

彼らが街を離れたあと、御者は言いました。「私をジョンと呼んでもいいですよ。あそこでは私は自分が誰だか分かりませんでしたが、いまや自分はジョンです」

ラビはこう締めくくりました。「人が私のところに来たとき、人は『自分が誰であるか知りません』。人は自分の卑しさに気づき、体に基づく自分のアイデンティティが抑えつけられるのです。人は現実に立ち帰ります。『私は自分が誰だと考えているのか』。しかし私から離れるとすぐ、人は再び『ジョン』になり、体のアイデンティティが戻ってくるのです」